経営管理
労働分配率の計算方法や目安とは?【人件費をコントロールする重要性】
労働分配率を意識したことがない人
「そもそも労働分配率って…なに?どうやって計算すれば良いの?自分の会社の労働分配率は、どれくらいが適正なんだろうか…?人件費との向き合い方、労働分配率を経営に活かす方法を教えてください。」
こういったお悩みに答えます。
本記事のゴール
3分程で読み終わります。読み終えた後には、「労働分配率の重要性」がわかり、計画的に人件費をコントロールできるようになります。
こんにちは。近藤税理士事務所の近藤です。
私は、税理士事務所・一般事業会社・企業再生コンサルティング会社勤務を経て独立した少し変わった経歴を持つ税理士です。
税理士業界から一度離れ、倒産危機に陥る会社をたくさん見てきたからこそ、「数字の重要性」を再認識することができました。
その貴重な経験のなかで得た「気付き」や「ノウハウ」をブログに綴って情報発信しています。
「経営を数字という言葉で語れるようになること」
そうすれば、あなたの会社は必ず変われます。
労働分配率とは?その計算方法や目安は?
労働分配率とは、会社が稼ぐ「限界利益(粗利総額)」のうち、「人件費」にどれくらい支払われているかを見る指標で、人件費を適切にコントロールするための判断材料として活用することができます。
人を雇えば、給料やボーナスを支払い、社会保険や労働保険にも加入しなければなりません。これらの人件費は、会社の経費のなかでも金額が大きく、あなたの会社も例外ではないと思います。
つまり、経費負担の大きい人件費を適切にコントロールできるかどうかで、あなたの会社の利益構造が決まるといっても過言ではありません。
労働分配率は、あなたの会社にとってそれほど重要なことだと言えます。
労働分配率の計算方法
労働分配率の計算方法は、下記の通り。
労働分配率 = 人件費 ÷ 限界利益
(限界利益 = 売上高 – 変動費)
ご覧の通り、労働分配率は「限界利益(粗利総額)」に占める「人件費」の割合です。
例えば、150で仕入れた商品を250で販売する場合、限界利益(粗利総額)は100(250 – 150)となります。この限界利益(粗利総額)100を稼ぐために人件費が60かかっていれば、労働分配率は60%(60 ÷ 100)となります。
(ちなみに、限界利益(粗利総額)から人件費を支払った残りの40(100 – 60)で固定費を賄いつつ利益を出す計算になります。労働分配率が高すぎれば、当然に利益は出にくくなります。)
労働分配率の計算自体は簡単ですが、計算結果はとても重要です。
あなたの会社の労働分配率は、どれくらいでしょうか?
労働分配率の目安
労働分配率の目安は、業種やビジネスモデルによる違いもあるので一概に言えません。
また、会社の成長過程(成長期・安定期・衰退期)によっても違いますし、人材投資の方針によっても違います。
だから、一般的な労働分配率の水準との比較は、あまり重要ではありません。
それより、あなたの会社の状況に応じた労働分配率の目標を「戦略的」かつ「計画的」に設定して、その目標達成に向けて取り組んでいくことが大事です。
あなたの会社が目標とすべき労働分配率は…?
一度、真剣に考えてみましょう。
- 労働集約型:70%
- 準労働集約型:60%
- 標準:40%~50%
- 資本集約型:30%
(参考)一般的な労働分配率のだいたいの水準
労働分配率を改善するためにやるべきこと
現状の労働分配率が高いと感じる場合、
それを改善するためにやるべきことは下記の通り。
- その①:「過去の労働分配率」を分析する
- その②:「目標とすべき労働分配率」を設定する
- その③:「限界利益(粗利総額)」を最大化させる
その①:「過去の労働分配率」を分析する
あなたの会社の過去数期分の労働分配率の実績を計算して、時系列に並べてみましょう。
あなたの会社の実績ですから、これ以上参考になる数値はありません。目標とすべき労働分配率のヒントが見えてくると思います。
直近の労働分配率が「下降傾向」にある
人に関して効率的な経営ができており、理想的な傾向といえます。
(一方で、社員に無理な労働環境を押し付けている結果として労働分配率が下がっているということも考えられますが、ここでは深掘りはしないでおきます。)
直近の労働分配率が「上昇傾向」にある
この場合、積極的に人材投資をしているか、もしくは、人件費に見合う限界利益(粗利総額)を稼げていないかのどちらかです。
積極的に人材投資をしていて、その結果としての労働分配率の高さが想定通りであるのなら問題はありません。でも、そうでないのであれば、人件費に見合う限界利益(粗利総額)を稼げていないということですから、早急に何らかの対策が必要です。
いちばん経常利益が大きかった頃の労働分配率は?
これ、かなり参考になると思います。
だって、あなたの会社の過去の実績ですから。ただの「机上の空論」ではなく、非常に「リアル」な話です。
「あなたの会社がいちばん儲かっていた頃の労働分配率がどうなっていたのか?」
分析する価値は充分にあると思います。
その②:「目標とすべき労働分配率」を設定する
上記の分析を参考に、あなたの会社が「目標とすべき労働分配率」を設定してみましょう。
ここでは、あまり細かいことは考えずに「労働分配率をこれくらいにしたい!」という想いを目標にしてみてください。もし、改めたければ修正すれば良いだけですから。
(ただし、実現不可能・非現実的な目標は逆効果になりますのでやめてください…)
その③:「限界利益(粗利総額)」を最大化させる
再度、労働分配率の計算式を載せておきます。
労働分配率 = 人件費 ÷ 限界利益
(限界利益 = 売上高 – 変動費)
この計算式の通り、労働分配率は「限界利益(粗利総額)」と「人件費」とのバランスで決まり、分子の人件費を減らすか、分母の限界利益(粗利総額)を上げるかで労働分配率は改善します。
でも、短絡的に人件費の削減に走らないでください。そんなことをすれば、働く社員の士気が下がり、間違いなくあなたの会社は弱ります。
やはり、労働分配率を改善させるためには、「限界利益(粗利総額)」を最大化させること。これに尽きます。
それでは、「目標とすべき労働分配率」に近付けるためには、あなたの会社の「限界利益(粗利総額)」をいくらにすれば良いのでしょうか?
それは、「人件費」を「目標とすべき労働分配率」で割り戻せば「目標達成に必要な限界利益(粗利総額)」が計算できます。
例えば、限界利益(粗利総額)が1,000で人件費が600であれば、労働分配率は60%(600 ÷ 1,000)です。労働分配率60%は高いと考え、目標を50%と設定するならば、その目標達成に必要な限界利益(粗利総額)は1,200(600 ÷ 50%)となります。
つまり、人件費の削減ではなく、限界利益(粗利総額)を1,000から1,200に増やすことで労働分配率を改善させるのです。そのために必死になって考え、実現していくことこそが経営なのです。
このようにシミュレーションしながら予算として妥当な限界利益(粗利総額)を設定し、その達成のための具体的な行動を計画していきます。
あとは、予算達成のために行動計画を推し進めていくのみです!
労働分配率を考えるうえで最も大切なこと
「あなたの会社に適した労働分配率を見極める!」
労働分配率を考えるうえで最も大切なことです。
労働分配率が悪化しているにもかかわらず無策のまま人員を補充したり、過度な人手不足で労働分配率が異常に低すぎるにもかかわらず人員を補充せずに無茶な労働環境を強いていたりと、人件費のコントロールが上手くできていない会社は少なくありません。
その要因は、労働分配率を全く活用できていないからと断言できます。
一般的な労働分配率の水準や他社比較ではなく、あなたの会社としての適正な労働分配率がわかれば、人件費を上手にコントロールすることができるようになります。
さらに、あなたの会社が利益目標を達成したとき、社員への決算賞与の算定基準としても活用できます。社員のモチベーションアップで、さらなる「限界利益(粗利総額)」のアップを目指しましょう。まさに「好循環」を生み出すのです。
人件費の「額」は上げて、労働分配率の「率」を下げる!
これこそが、本来在るべき正しい経営の理想形です。
そのために何度も何度もシミュレーションをして、必ず「あなたの会社に適した労働分配率」を見極めてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ、下記の当事務所サービスページもご確認いただけると嬉しいです。