経営管理
かしこい節税対策の検討順序とは?【税理士が教える正しい節税の考え方】
節税対策に関心がある社長
「もう少しで決算。このままの調子でいけば、そこそこの利益が出そう。そこで、節税対策をいまのうちから考えていきたいけど、節税対策って何をすれば良いの?良い方法があれば教えてほしい。」
こういったお悩みに答えます。
本記事のゴール
3分程で読み終わります。読み終えた後には、目先の利益だけにとらわれない節税対策の考え方がわかり、あなたの会社は「かしこい節税」ができるようになります。
こんにちは。近藤税理士事務所の近藤です。
私は、税理士事務所・一般事業会社・企業再生コンサルティング会社勤務を経て独立した少し変わった経歴を持つ税理士です。
税理士業界から一度離れ、倒産危機に陥る会社をたくさん見てきたからこそ、「数字の重要性」を再認識することができました。
その貴重な経験のなかで得た「気付き」や「ノウハウ」をブログに綴って情報発信しています。
「経営を数字という言葉で語れるようになること」
そうすれば、あなたの会社は必ず変われます。
節税対策を検討するタイミング
節税対策を検討するタイミングは、一般的には決算の3ヶ月前(早ければ決算の6ヶ月前)からスタートさせる会社が多いです。
節税対策には、すぐに実行できるものもあれば、検討に時間を要するものもあるので一定の期間が必要です。決算が近づいてきて慌てることのないように、スケジューリングをして計画的に進めていきましょう。
また、節税対策は、業績予想とセットで考える必要があります。
例えば、決算まで3ヶ月。業績予想では目標利益に届かない、または赤字が見込まれるなら、節税対策を検討している場合ではありません。決算までの残りの期間で、できうる限り目標利益に近づけるための対策を打つ必要があります。
一方で、業績予想で目標利益を大幅に超えることが見込まれるのなら、(会社の経営状態にもよりますが)節税対策を検討しても良いでしょう。税金や資金繰りもシミュレーションしながら検討を進めます。
なお、業績予想は都度の見直しが必要です。業績は、予想どおりになるものではありません。時間の経過とともに業績予想をブラッシュアップしていき、精度を上げていきましょう。
精度の高い業績予想があってこそ、より効果の高い節税対策を打つことが可能となります。
かしこい節税対策の検討順序とは?
「できるだけ税金を抑えたい!」
誰しもが思うことであり、その感情がみなさんを節税の「沼」へと誘います。
でも、節税ばかりに気を取られていてはいけません。節税は、税金を少なくしますが、同時に会社の体力を奪っていきます。
そのことに気付かずに節税ばかりしていると…
やがて「銀行からまともに融資してもらえない会社」に成り下がってしまうことでしょう。
そうならないためにも、まずは「正しい節税の考え方」を身に付ける必要があります。
正しい節税の考え方
会社を経営する一番の目的は…?
それは「しっかりお金を稼いで永続的に会社を存続させること」です。
これから節税対策を検討していくにしても、この一番大切な目的を絶対に忘れてはいけません。なぜなら、節税対策は「税金を抑える手段」ですが、「お金と利益を減らす行為」でもあるからです。
例えば、節税対策を実行する前の利益が1,000の場合。税率を30%とすると税金は300(1,000 × 30%)です。そこで、節税対策として経費を600増やすと、利益は400(1,000 – 600)に圧縮され、税金を120(400 × 30%)に抑えることができます。
このケースでは、節税対策によって税金を180(300 – 120)節税できます。しかし、お金は420(600 – 180)も減ることとなり、節税額以上のお金が手元から無くなる結果となります。理由は単純で、180の節税をするために600のお金を使って経費を増やしたからに他なりません。
このことから、節税は目先の利益だけで検討するものではなく、会社の業績や経営状態、今後の展望や銀行からの評価など、総合的な視点で判断していく必要があります。
会社の永続的な存続に対して「マイナス影響」を与えるような節税は、絶対にしてはいけない。これが正しい節税の考え方です。
節税対策の検討順序
節税対策を検討するにあたっては、節税ありきの視点ではなく、常に財務とのバランスを考慮することが大事です。
そのうえでの節税対策の検討順序は、下記の通りです。
- 順序①:財務リストラ
- 順序②:リスクヘッジ
- 順序③:未来のための費用・投資
- 順序④:業務の効率化
- 順序⑤:その他の節税策
順序①:財務リストラ
「財務リストラ」とは、貸借対照表に計上されている項目のうち、すでに資産性のないものを積極的に処理・処分することです。
【財務リストラの具体例】
- 回収見込みのない不良債権の処理
- 売れそうにない不良在庫の処分
- 遊休固定資産の処分・除却 など
財務リストラを最初に検討するのは、新たにお金をかけずに節税(処分費用などの実費を除く)ができ、なおかつ、貸借対照表を綺麗にできるからです。まさに「一石二鳥」とはこのことです。
財務リストラをやらずして「お金がかかる節税」をするのは、本当にもったいないです。まずは、財務リストラで損失を顕在化させて、その損失の一部を税金で取り返しましょう。
順序②:リスクヘッジ
「リスクヘッジ」とは、会社の存続が危ぶまれるほどの将来起こりうる有事のリスクに備えて、平時のうちから対策を打っておくことです。
【リスクヘッジの具体例】
- 火災や情報漏洩等のリスクに備えての損害保険の加入・見直し
- 社長の「もしものとき」に備えての生命保険の加入・見直し
- 取引先の倒産等による資金不足に備えての中小企業倒産防止共済の加入 など
リスクヘッジに要する費用は、節税というより、会社を永続的に存続させるための必要経費といえます。もしもの有事が起こったときに会社が簡単に倒産することがないようにリスクヘッジをして、その費用の一部を税金で取り返しましょう。
ただし、リスクヘッジをしたうえで、さらに節税だけを目的とする保険に加入するのはやめましょう。お金の無駄です。
順序③:未来のための費用・投資
「未来のための費用・投資」とは、会社の未来の利益創出のために強気、かつ、積極的な仕掛けをしていくことです。
【未来のための費用・投資の具体例】
- 人材の募集、人材育成のための教育や研修
- 会社のブランディングや広告宣伝、販売促進の実施
- 未来の利益に繋がる固定資産の購入、設備投資 など
経営は「生き物」です。何の策も講じずに業績を維持・向上させることはできません。だから、会社は常に未来の利益のための投資をし続ける必要があります。
会社の未来の利益のために投資をして、その費用の一部を税金で取り返す。これこそが、「節税の王道」です。
ただし、投資の「やりっ放し」はいけません。その投資が本当に会社の未来の利益に貢献しているのかどうか、ただお金を垂れ流しているだけになっていないかどうか、必ず費用対効果の検証をしましょう。
順序④:業務の効率化
「業務の効率化」とは、ITツールやシステムの導入を進めて「時間的なコストの削減」、「労働時間の短縮」、「生産性の向上」などを実現させることです。
【業務の効率化の具体例】
- 会計システムや販売管理システムの導入・見直し
- パソコンやタブレット等のハードの購入・入替え
- その他業務効率化ソフトの導入 など
業務プロセスは、何もしないで放っておくと「ムリ・ムダ・ムラ」が蓄積されていき、気付かないうちに会社にダメージを与えていきます。業務効率化によって、このような「目に見えない損失」を無くすことができれば、会社に利益が生まれます。
業務の効率化は、会社を健全に成長させるためにとても大切です。積極的に業務の効率化に取り組み、その費用の一部を税金で取り返しましょう。
順序⑤:その他の節税策
上記①~④の節税対策を講じたうえで、ようやくその他の節税策を検討します。
【その他の節税策の具体例】
- 決算賞与の支給
- 慰安旅行の実施
- 消耗品や少額資産の購入
- 短期前払費用の支払い
- 社員の生命保険の加入
- 役員退職金の支給 など
ここで挙げているのは、一般的に節税対策として考えられているものの一例です。上手に活用すれば問題ありませんが、やり過ぎは禁物です。
過度な節税は、会社の体力を奪っていきます。絶対にやめましょう。
まとめ
かしこい節税対策の検討順序について書いてきました。
かしこい節税対策の検討順序
- 順序①:財務リストラ
- 順序②:リスクヘッジ
- 順序③:未来のための費用・投資
- 順序④:業務の効率化
- 順序⑤:その他の節税策
この順序で節税対策を検討していくことが「かしこい節税」に繋がります。
会社を経営する一番の目的は、
「しっかりお金を稼いで永続的に会社を存続させること」です。
あなたは、自分の会社をどんな会社にしたいですか?
もし、あなたが自分の会社を強く育て、大きくしていきたいと考えているのなら…
「汗水垂らして稼いだお金を、なぜ税務署に持っていかれるのか?」という感情の克服が、中小零細企業から抜け出す大事な発想です。
決して節税の「沼」に溺れることなく、会社を永続的に存続させるための手段として「かしこい節税」を使いこなしてください。
それが、あなたの使命です。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ、下記の当事務所サービスページもご確認いただけると嬉しいです。