融資・資金繰り

銀行が「役員貸付金」を嫌う2つの理由【銀行融資にもたらすデメリット】

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2020.02.28

2021.11.18

会社からお金を借りている社長
「決算書や試算表に役員貸付金があると銀行からの印象が悪いって聞いたけど…。自分の会社からお金を借りることの何がいけないの?どんなデメリットがあるの?詳しく教えてください。」

こういったお悩みに答えます。

本記事のゴール
3分程で読み終わります。読み終えた後には、役員貸付金が銀行融資にもたらすデメリットがわかることで、銀行からの評価が下がることを未然に防ぐことができます。

こんにちは。近藤税理士事務所の近藤です。

私は、税理士事務所・一般事業会社・企業再生コンサルティング会社勤務を経て独立した少し変わった経歴を持つ税理士です。

税理士業界から一度離れ、倒産危機に陥る会社をたくさん見てきたからこそ、「数字の重要性」を再認識することができました。

その貴重な経験のなかで得た「気付き」や「ノウハウ」をブログに綴って情報発信しています。

経営を数字という言葉で語れるようになること

そうすれば、あなたの会社は必ず変われます。

決算書に「役員貸付金」が載っていませんか?

びっくりする男性の画像

役員貸付金とは、「会社が役員にお金を貸している状態」をいいます。

役員貸付金が生じるパターンとしては、大きく2つあります。

ひとつは、会社が役員にお金を貸した場合。そのままですね。

もうひとつは、役員が何に使ったのかがわからないお金(いわゆる「使途不明金」)を「役員貸付金」として会計処理した場合。

後者の場合は、その役員に説明をしたうえで経理担当者や会計事務所が会計処理していると思われますが、本人はあまり理解しておらず、気付けば「役員貸付金」がそれなりに膨らんでいることもあったりします。

(経理担当者や会計事務所を責めないでくださいね。悪いのは、会社のお金を何に使ったのかが整理できない「その役員」ですから。)

あなたの会社の決算書や試算表に「役員貸付金」が載っていませんか?

役員貸付金は銀行融資を考えるうえで大きな落とし穴になる可能性がありますので、注意が必要です。

銀行が「役員貸付金」を嫌う2つの理由

指を二本立てている画像

たかが「役員への貸付金じゃないか」と思わないでください。

この問題を軽く考えていると、あなたの会社の業績が下がった時に思うように銀行融資が受けられない事態に陥るかもしれませんよ…。

銀行が「役員貸付金」を嫌う理由は、下記の通りです。

  • 理由①:お金にだらしない会社と感じるから
  • 理由②:会社のお金が役員に流れていると考えるから

理由①:お金にだらしない会社と感じるから

役員は、会社の経営者です。

その経営者たる者、仕事とプライベートをしっかり線引きしないといけません。そうしないと会社のお金や業績を管理することはできません。当たり前の話です。

でも、決算書や試算表に「役員貸付金」があると…

銀行としては、「仕事とプライベートを区別できない役員が経営している会社」と考え、警戒します。

「お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ」というジャ◯アンの名言がありますが、社会では通用しません。

仕事とプライベートは、しっかりと区別しましょう。

理由②:会社のお金が役員に流れていると考えるから

決算書や試算表に多額の「役員貸付金」があると、銀行はこんなふうに考えます。

「融資したお金が役員に流れているのではないか?」

「役員が経営する別の会社への迂回融資に利用されているのではないか?」

悪気はないのかもしれませんが、「役員貸付金」があれば銀行にそう思われても仕方ありません。実際に会社のお金が社外に流出しているわけですから。

そのお金はどこに行ったのでしょうか…?

やはり、銀行としては警戒せざるを得ません。

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「役員貸付金」の2つのデメリットとは?

悲しみで口に手を当てる男性の画像

役員貸付金のデメリットは、下記の2つです。

  • デメリット①:銀行融資が受けにくくなる
  • デメリット②:余計な税金を支払うことになる

デメリット①:銀行融資が受けにくくなる

決算書や試算表に多額の役員貸付金があると、銀行からの評価が下がります。

多額の役員貸付金があるということは、これまでに増えることはあっても減ることはなく現在に至るケースがほとんどです。

会計上、役員貸付金は「資産」ですが、回収実績が無いに等しい役員貸付金を銀行は資産としては扱いません。つまり、銀行は役員貸付金を大幅にマイナス処理して会社を評価するのです。

評価の結果が思わしくないものとなれば、当然に銀行は融資しづらくなります。最悪の場合、融資を見送ることもあります。

「お金に困っているのなら、まずは役員貸付金を返してもらえば?」

これが銀行の本音です。

デメリット②:余計な税金を支払うことになる

役員貸付金があると、その貸付金に対して「受取利息」を計上しなければいけません。

受取利息は、会社としては「収益」となりますので、税金がその分増えます。これは税法のルールですから、受取利息を計上していなければ税務調査で指摘されることになるでしょう。

つまり、役員貸付金のために余計な税金を支払うことになるのです。

1年当たりの税金としては、それほど大きくないかもしれませんが、何もしないまま何年も役員貸付金を放ったままにしておくと…

結果として、無駄な税金の支払いで「それなりのお金」が会社から無くなることになります。

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「役員貸付金」がある場合の解消方法

アドバイスをする女性の画像

もし、役員貸付金が「少額」であるなら、できるだけ速やかに役員からお金を回収してください。

役員貸付金は、決算書や試算表にあるだけでマイナスですから、本来の正しい状態に戻しましょう。

しかし、役員貸付金が「多額」であるなら、簡単には解消できません。

その場合の考えられる解消方法としては、主に下記の5つです。

  • 方法①:まずは預貯金から一時金を回収する
  • 方法②:不要不急の資産を売却して回収する
  • 方法③:分割して毎月回収する
  • 方法④:役員退職金で回収する
  • 方法⑤:債権放棄する

方法①:まずは預貯金から一時金を回収する

まずは、その役員の預貯金から、いくらかのまとまったお金を回収します。

考え方によっては、その預貯金の一部はもともと「会社のお金」とも言えます。

多額に膨らんだ役員貸付金を少しでも速やかに減らすことが目的なので、生活に困らない範囲で預貯金の余剰資金を返済してもらいましょう。

方法②:不要不急の個人資産を売却して回収する

生活していくのに必要のない不要不急の個人資産を売却して、その売却資金を回収します。

売却する資産によっては、ある程度のまとまったお金になる場合もありますので、役員貸付金を大幅に圧縮できるかもしれません。

ただし、個人資産を売却することで、その役員に所得税等の税金がかかる場合もありますので、しっかりと税金も考慮しながら話を進めていきましょう。

方法③:分割して毎月回収する

上記①と②の方法で役員貸付金の全額を精算できれば良いのですが、それでも残る場合は、分割して毎月回収します。

具体的には、「金銭消費貸借契約書」を取り交わし、◯年間で毎月決まった金額(+利息)を計画的に回収していくことをルール化します。

場合によっては、その役員の役員報酬を増額して、その増額分から回収していくことも検討する必要があるかもしれません。

だだし、その場合は会社の利益が減るのと同時に、その役員の税金や社会保険料の負担が増加することになります。

方法④:役員退職金で回収する

上記①~③の方法でも解消しきれないほどの多額の役員貸付金の場合、最終的には役員退職金で回収することになります。

ただし、税法のルールに従って役員退職金を支給しないと、あとで余計な税金がかかることになるので注意が必要です。

方法⑤:債権放棄する

この方法は、税務上のリスクが高過ぎるのでお勧めできませんが、ひとつの手段として説明しておきます。

役員貸付金の金額が大き過ぎて解消しきれない場合、「債権放棄」も選択肢として考えられます。つまり、会社がその役員に対して役員貸付金を放棄します。

ただし、不用意に債権放棄すると、会社としてはその損失が「損金不算入」となるのと同時に、その役員に対しても「役員賞与」として扱われることで、余計な税金がダブルでかかることになります。

債権放棄を考えるくらいですから、相当に多額な役員貸付金と思われます。その分、税金も相当な金額になる可能性がありますので、簡単に実行できるものではありません。

あとになって「予想外の税金」で後悔することがないよう、慎重に検討を重ねる必要があります。

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まとめ

銀行が「役員貸付金」嫌う理由とそのデメリットについて書いてきました。

決算書や試算表に多額の役員貸付金があっても、そんなのが関係ないくらい会社の業績が良ければ、銀行も融資してくれるでしょう。やはり、業績の良い会社は「強い」です。

役員貸付金のデメリットが顕在化してくるのは、「業績が悪化してきたとき」です。

会社には、業績の良いときもあれば、悪いときも必ずあります。業績が悪化すれば、銀行融資がこれまで以上に必要になる場面も出てきます。

そんなときに銀行融資が思うように受けられなかったら…資金繰りに相当苦労することが安易に予想できます。

役員貸付金は、会社にとって「マイナス」でしかありません。ですから、そもそも役員貸付金なんて起こりえない経営をするべきなんです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ、下記の当事務所サービスページもご確認いただけると嬉しいです。

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